日本では、建築基準法や都市計画法において全国の地域・地区の特性に合わせた「防火地域・準防火地域」が指定されています。それぞれの地域への建設は、国土交通省の定める防火・耐火基準をクリアした建築物のみが許可されています。
耐震性能と同様、防火性能もまた、素材だけで性能が決まるわけではありません。一般には「木造住宅は火災に弱く、都心など住宅密集地においては木造住宅を建築することはできない」と思われがちですが、わたしたちのつくる板倉の家は、準防火地域への建築を許された高い防火性能を持ちます。
木材は燃える性質を持っていますが、火がついて炭になることで、まだ燃えていない部分に熱が侵入するのを防ぎます。
建築基準法では、木造2階建住宅の外壁に、(1)外壁が容易に崩壊・亀裂を起こさないこと「非損傷性」、(2)外壁の裏面(屋内)の温度が容易に上昇し、内部に延焼しないこと「遮熱性」の2つが要求されています。この2つの性能を30分間持つ外壁を防火構造と呼びます。
実験では、写真のように30mmの落し込み板壁の表面に24mm厚の縦木摺り(たてきずり)板を隙間なく張り、壁の総厚を54mmとし、高さ約3m、幅約3.5m、5tの荷重をかけながら加熱を行いました。
全体として、板倉構法の壁は、建築基準法の要求する防火構造(非損傷性・遮熱性)30分を超える性能を持つことが確認できました。実験体の大きさは、3m×3m。火災に十分対応できる大きさと質を感じていました。しかし実験は可燃材である木材に800℃を30分間連続で加熱延焼し、燃え尽きて崩壊するかしないかを検証するものです。目の前が火災現場。熱風が発生し、轟音が耳に響き、体感温度が上がり恐怖を覚えました。
延焼が進み、炭化が厚くなり杉板の温度変化が表示されます。杉板は、厚さを増すほど裏面温度の上昇を抑えており、室内側の延焼危険が低いことが実証されました。
板倉構法の壁倍率を算出し、最終的に壁の仕上げ方と壁の長さ(柱と柱の距離)別の4種類で、国土交通省省の認定を得ることができました。
実験終了後、炎が残り高温を保ったままの板壁の、加熱側杉板24㎜、炭化部分をはぎ取りましたが、室内側の杉板30㎜は変色なく原形のままでした。この実験結果により、板倉の壁は家族を守り、火災後の修復も可能である事が証明されました。
火災の際、倒壊や延焼の点を考慮する建築も重要ですが、建材から発生する有毒ガスにも考慮する必要があります。現代の住宅は、壁、床、断熱材などにさまざまな建材が使用されており、火災時に有毒ガスを発生させる可能性があります。断熱材、合板、石油化学製品を使用しない板倉の家では、建材から有毒ガスが発生する心配がありません。